今回は、DX化するときによく使われる用語をいくつかご紹介したいと思います。
ビジネス用語として使われるものもあれば、DXならではといった用語もあります。
DXでよく使われる用語
クラウド
クラウドは、クラウドコンピューティングの略で、ユーザーがネットワークを使って、サーバーやアプリケーションやソフトウェアやストレージなどのサービスを利用できるサービス形態のことです。
例えば、Microsoft Wordを自分のパソコンにインストールして使うのはクラウド形式ではありません。ただし、同じくMicrosoftのOffice365というサービスに登録してブラウザでWordを開いて使うのはクラウドサービスになります。
同じソフトウェアでも、自分のパソコンにインストールやダウンロードして使ったりみたりするのではなく、インターネット経由で使用できるシステムやツールのことをクラウドと呼びます。
サービスの本体がどこかに実際に設置されているというよりは、空の上の雲(Cloud)のように浮かんでいるイメージしてください。その雲に向かってインターネットという縄を飛ばし、アクセスしてサービスを受けるようなイメージです。
AI(エーアイ)
AIは、Artificial Intelligenceの略で、日本語にすると”人工知能”となります。
コンピューターに人間がするような数学の計算方法やアルゴリズム(問題の処理の仕方)を覚えさせ、「ある問いがきたらこう答える」や「こう頼まれたらこれを返す」みたいなパターンをいくつも用意することで便宜的に人間の知能のようなものを作り上げサービスを提供しています。キーなるのは人間の知性をシュミレートできるような(人間の認知機能を模倣できるような)ものであるということ。
内容的には翻訳・自動運転・医療用の画像を診断・写真の加工・チェスや囲碁の相手などのサービスがあります。自動化だけでなく何かコンテンツを新たに作り出すAIのことを「生成AI」と呼びます。自動運転技術は生成AIではありませんが、写真加工ツールで自分の写真からイラスト化してくれるAIは生成AIとなります(この場合、イラストを新たに生成しています)。
AIの開発では、大きく分けて、「AIに知識を覚えさせる開発」と「AIを使ってサービスを提供する開発」の2つがあります。
RPA(アールピーエー)
RPAは、Robotic Process Automationの略で、日本語にすると”ロボット技術による工程自動化”です。これまで人間が行なってきた作業(工程)をAIやソフトウェアツールにプログラミングし組み込むことで、人間がしなくても機械が学習してやってくれる仕組みのことです。
例えば、ある人が資料AとBを見比べて差異がないか確認する仕事があったとします。これを機会ができるようにプログラミングし、自動的に処理が走るようにする、というのがRPAの活用です。
このようなデータの突き合わせ以外にもシステムにデータを入力させたり(転記作業)、商品の購入履歴などのデータをレポート化して表示させたりできます。
MAツール(エムエーツール)
MAツールは、Marketing Automation Toolのことで、日本語にすると”マーケティング自動化ツール”です。
新規顧客を獲得するためのマーケティング活動を可視化して自動化してくれるツールです。
具体的な例としては、まずセミナーやSNSで新規顧客になりそうなユーザーの情報をゲットし、ツールに組み込みます。このときはシステムにユーザー自身でそのまま入力したり(無料会員登録など)セミナー後のアンケートなどから入手します。それを元にオンライン商談を持ちかけたり、デモ版の紹介をしたりし、顧客の関心に合わせたコンテンツやメールを配信します。その後、顧客の情報や行動傾向から見込み客を分類し、実際の営業活動(見積もりや個別提案)まで行います。ここまでをMAツールを使うことで自動的にできたり、体系的にできたりします。
現代は情報社会となり、見込み客のデータがたくさん手に入るようになりました。しかし、それに反比例するように働き手の数は減ってきています(人口減のところでも話した通りです)。つまり、データはあるし、見込み客もいそうなのにそのデータを使って営業する側の人数が足りない、という状況です。その現象を軽減するためにMAツールを利用する企業は増えてきています。
SFA(エスエフエー)
SFAは、Sales Force Automationの略で、日本語にすると”営業支援システム”といえるもの。企業の営業チームが使う情報をデータ化・管理し、情報の蓄積や分析を行なってくれるシステムです。
上のMAツールと同じような機能がありますが、MAツールが新規顧客を獲得するためのもの(新規顧客に対するアクションを自動化)のに対し、SFAでは新規も既存も含めた顧客管理をしてくれたり案件管理や行動管理や商談管理など、新規顧客以外で案件ごとに営業活動全般に対するシステムと考えて良いでしょう。
新規顧客をとるところまではMAツールを使い、その後はSFAで営業活動を管理する、というような流れもあるようです。
CRM(シーアールエム)
CRMは、Customer Relationship Managementの略で、日本語にすると”顧客関係管理”となります。顧客との関係性、コミュニケーションを管理し、自社の従業員と顧客との関係を管理するものです。
そのカバー範囲は、顧客データの収集、データの管理と分析、顧客に合わせたアプローチなどがあります。
上のMAツールやSFAと混同されることも多いですが、MAツールは新規顧客へのアクションに対応。SFAは案件ごとの営業活動であり、データ管理・営業チーム管理が主旨で営業のデータを人依存からチーム依存にしていくのが目的。CRMは企業と顧客の関係性をデータ化し管理することが目的であり、自社と顧客のやりとりを蓄積し良好な関係性を持続させることを目的としています。
元々はSFA・CRMはまったく別の目的で作られたものですが、どちらも営業業務用のシステム・ツールのため、サービスの普及や高度化によって混同されやすくなってきています。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングは、ユーザーに役立つ情報を提供することで商品やサービスを知ってもらうマーケティング方法です。わかりやすくいうと、「この商品を買ってください!」という広告とは違い、「こうすればあなたのビジネスや生活がより良くなりますよ。ちなみにそこでこの商品を使えますよ」という広告のことであり、「こうすればあなたのビジネスや生活がより良くなりますよ」という有益な情報の部分を「コンテンツ」と呼んでいます。
例えば、シャンプーで例をみてみましょう。テレビで頻繁に流れているシャンプーのCMは「このシャンプーを使うとこの女優さんのような髪を手に入れられますよ。なので買ってください」というメッセージです。これはコンテンツマーケティングではありません。
では、動画配信サイトで、美容師とコラボして「頭皮に優しいシャンプーの仕方」というような動画を撮り、そこでそのシャンプーを使ってもらう、というのはどうでしょうか。シャンプーの仕方と教える、というユーザーにとって有益な情報を渡しながらシャンプーのことも紹介できていますね。これがコンテンツマーケティングの例です。その商品単体以外の部分で、有益な情報があるかどうかがキーになっています。
さて、クーポンの配布はどうでしょうか。これはコンテンツマーケティングと言えるでしょうか。正解は、コンテンツマーケティングではありません。クーポンの目的は「安くしますのでこの商品を買ってください」です。そこに商品獲得以外にユーザーにとって有益な情報はなく、これはコンテンツマーケティングとは言えません。
コンテンツマーケティングの手段はSNS、動画メディア、メルマガや広告、セミナー、SEOなど多岐にわたり、商品単体以外に有益な情報を発信・提供できるものであればコンテンツマーケティングの手段となります。
プロシューマー
プロシューマーは、生産者(Producer)と消費者(Consumer)が一体化したA.トフラーによる造語です。
現代では、消費者が既存の商品に改良やアレンジを加えたものを発信したり、SNSを通して口コミで自分の感想を述べたりする場が増えました。その意見を元に製造者側が商品を改善していく、という流れも起こっています。これらの流れを起こす人は、消費者でもあると同時に、その商品に対して改善をおこなっている生産者でもあります。生産者と消費者のインターネット上での双方向的なやりとりが活発になってきたからこそ生まれた造語です。
IPA(アイピーエー)
IPAは、Information technology Promotion Agency, Japanの略で、日本語では”独立行政法人 情報処理推進機構”という名の機関を指します。日本のIT分野の発展を目的とし、IT人材の育成や、IT情報の公開、情報セキュリティの研究や国際的なIT標準化情報の提供など幅広くおこなっています。
デジタル変革に関する調査も行なっており、DX事例や統計グラフを発信していたりするので、DXについて調べたいときにはIPAの公式サイトや情報が役立つかもしれません。
ML(エムエル)
MLは、Machine Learningの略で、日本語にすると”機械学習”です。コンピューターに大量のデータを覚えさせ、処理・分析することでルールやパターンを発見し、そのルールやパターンを用いて、精度の高い未来予測をさせることができます。
AIと似ていますが、AIがより人間に近い思考や動作、判断基準を覚えさせられるのに対して、MLはより機械的に、大量のデータを読みこんで自ら学習し、処理精度をあげていきます。MLはAIの中に含まれる1つの枠組みであり、AI開発の一部分とも言えるでしょう。
開発は進んでいますが、コンピューターが自分で全てを完璧に覚えてルールを見つけ、未来予測する、というのはいまだ難しく、多くの場合、人間が間に入って調整をおこなったり、再トレーニングを行なったりしてルールやパターンを見つけ未来予測に生かしています。
IoT(アイオーティー)
IoTは、Internet of Thingsの略で、日本語にすると”モノのインターネット”になります。従来はインターネットに接続されていなかったようなモノがセンサー機器や駆動装置を使うことでネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、そのモノの持っている情報をやりとりできるようになる仕組みのことです。
例えば、外出先から自分の家のエアコンをつけたり、アレクサのような音声アシスタント端末に「音楽をかけて」というと連携しているスピーカーから音がながれてくるというのもIoTの例です。エアコンは従来、家のリモコンでしか操作できませんでしたが、ネットワークを通じて駆動装置を作動させ、動かすことができるようになりました。音声認識センサーを使うことでボタンを押さなくてもスピーカーから音を流すことができます。
これらは全てインターネットを介して情報をやりとりしているためです。また、取得した情報を蓄積し、今後の開発に繋げることもでき、DXではよく使われる技術になっています。
データドリブン
データドリブンは、取得したデータに基づいて(ビジネス関連で用語を使うときにはビジネス上の)判断・アクションをすることです。
DXではデジタルデータを取得してビジネスに活用しますが、その中でも特にデータから何か商品を生み出したり、データを可視化することを売りにしているものはデータドリブン型サービスと呼ばれます。蓄積したデータをもとに、集客したり、その顧客に配信する商材や広告を決めたりします。
データドリブンは、データの収集から始まり、データを可視化する・可視化したデータを分析する・分析した結果から次のアクションプランを設定する・価値や利益の向上を目指す…というふうにデータ主導で何かすることを指します。
この方法を使ったマーケティングをデータドリブンマーケティング、経営をデータドリブン経営と言います。データを使ってビジネスを進めていくことは、昔からおこなわれていましたが、DXが注目されている近年では(DXがデータ活用を基礎としていることから)再注目されています。
さて、ここまで12の用語をご紹介しましたが、いくつご存知だったでしょうか。これからのDX施策で役立てば幸いです。
次回のコラムでは、DXのポイントと壁となりうる課題についてお話しします。